(前編)Leeさんのプレゼン内容@Startup Weekend Tokyo Community Micro Editionをテキストに起こしてみました!!


2017年8月4日(金)-6日(日)、新宿区高田馬場にあるコワーキングスペース&シェアオフィス CASE Shinjukuを会場に「Startup Weekend Tokyo Community Micro Edition」が開催されました。その冒頭部分で、NPO法人Startup Weekendの理事長である李 東烈(DongYol Lee)さんのプレゼンの一部をテキストにしました。当日参加された方、これから参加を検討されている方、ぜひご参考ください!

「Startup Weekend Tokyo Community Micro Edition」って何?という方は下記の記事をご参考ください。

【その他の参考サイト】
※Startup Weekend Tokyo Community Micro Editionについて基本的な情報は下記サイトでご確認ください。
Startup Weekend Japan(公式サイト)
・Startup Weekend Tokyo Community Micro Editionの説明会が開催されました!(CASE Shinjuku 記事)
・Startup Weekend Tokyo Community Micro Editionの告知ページ

【ご注意ください〜!!】
この後の本文は約1万2千文字と長文です。お時間のある際に、ゆっくりじっくりお読みください。できるだけニュアンスや雰囲気が伝わるように、細心の注意を払いながらテキストに起こしました。が、完璧な状態ではありません(とLeeさんに言われました)。
また読み手をミスリードしないように、外部リンクを除き、強調などの表現は排除し、画像も使用していません。予めご了承ください。

それではどうぞ!!

なぜ、参加費3万円は「投資」となるのか

Micro Editionは、みなさんの参加費を払い戻す企画ではありませんよ、これは投資です。投資なので、私に返さなくていいです、ただ投資なので私もリターンが欲しいです。そのリターンとは「そのお金をどこにどのように使ったかということを教えてくれること」です。この3日間で使いきらなくてもいいです。「1年間かけて使った」ということでも良いです。そのお金をどこに使ったのか、そしてその使ったお金の効果を私に教えてください。

そうすることで、私がこのMicro Editionを繰り返していくなかで、あるチームは3万円で1人のフリーランスを雇った、あるチームは3万円でプロトタイプをつくり、マーケティングまでできた。そういうことが分かってくれば、一番効率よく使ったチームのノウハウを参加者の皆さんにシェアするつもりです。

それが、Micro Editionのビジョンです。「戻ってきた参加費」としてではなく「会社の資本金」を使うつもりでやってください。実際に会社を登記しようとすると3万円ではできないなど、現実にある制限も考えながら、一番効率のいい使い方をしてみてください。

Micro Editionは月に2回のペースで開催するつもりです。運営側は集客のコストもできるだけ少なくしたいので、今回はランディングページを作りFacebookページで5,700円分の広告を出しただけです。それでも10名(30万円)集まったので、今後もこの方法を続けていきます。5,700円で、2〜3万人にリーチしました。

みなさんも私のやり方をまねてみてください。使えるノウハウはみんなで使っていきましょう。 

Micro Editionのメンタリングと参加する上での注意点について

今回は1回目なので何をどう効率化していくかはわからないですが、これからやっていくたびにメンタリングの手法を効率化していきたいです。毎回、参加する人が変わったとしても、同じことを繰り返すのは効率的ではないので、私が皆さんに話した内容をテキスト化して、次回の参加者から同じ質問があれば、テキストを見てもらうなどして、どんどん効率化していく予定です。

10回程度開催した後には、私が一言も話さなくても、同じ効果が得られるようにしたいです。それぐらいを目標にしています。試行錯誤するために、メンタリングした内容を私はテキストに残していきます。そのため、今日参加してくれた皆さんの失敗事例も具体的に、今後のMicro Editionに参加する人たちのための資料として残す予定ですので、その点を予めご了承ください。

投資したお金の使い方やノウハウを貯めると同時に、メンタリングのノウハウも貯めていきます。その2つのノウハウを蓄積することで、プレイヤーとメンターの一番効率的な状態を目指すのが本当の目的です。実は皆さんを助けることが目的ではないので、皆さんに対するメンタリングが下手だったり、メンタリングを試行錯誤することがあるので、私からのメンタリングは取捨選択しながら使うようにしてください。

私がすごく偉い人で、いつも正解を伝えたり、代わりに仕事をすることは基本的にないと思います。基本的に取捨選択しながら、お互いが協力しあって、一番いい方法を見つけていきましょう。2017年、東京で起業するとき、資本金が3万円しかない場合の起業などなどのノウハウをためて、一番最速を出せるモデルをつくっていきましょうというのがアイデアです。

今回の参加者の状況について

全チームの状況を確認しました。今回は6チームです。6チームの状況を見ると、だいたいやりたいことや方向性はある。しかし、アイテムが確定して、きっちりして具体化されている状況ではなかったです。

ここから前に進みたいけど、どういう手順を踏めばいいかわからない。かつ、何故その手順を取るべきか、その手順をどう決めるべきかという基準、理論を知らない。そのため、その基準や理論を知りたい。そして、どういう手順を取るべきかということを知りたい、そういう状況でした。

それは全チームに共通しているので、メンタリングはやりやすいと思っています。本当は、①2~3年すでに事業をしている人、②すでに投資をもらっている人、③スタートポイントにいる人、バラバラの状況の人たちに個別にメンタリングをしていくことを想定したのですが、今回の参加者はある程度ステージが一緒なので、お互いに助け合えることも出来ると思います。

2時間何か1つのことをやってみて、失敗して時間を無駄にしたということが分かったら、皆にシェアして、お互い助け合いましょう。また、私が聞いた範囲では、今回の参加者の中でビジネスカテゴリが被っていることはないし、類似性もないと思います。ぜひ、お互い助け合ってください。

Startup Weekendとは本当のところ何なのか?

Startup Weekend のことを簡単に紹介させてください。
改めて私が説明するのは、このMicro Editionが初開催で、これから毎回集客する際に、私1人でいつまでも集客していると効率が悪い。そこで、皆さんが皆さんの知っている人を集客して連れてきてくれること、私に変わって説明してくれることをお願いしたいからです。

このMicro Editionは、当初は「Startup Weekend Tokyo Micro Edition」という名称だったのですが、わかりにくいということで「Community」をつけました。「Startup Weekend Tokyo Community Micro Edition」です。

日本語でそのまま訳すと「スタートアップウィークエンド東京コミュニティーの非常に小さい版」、という意味になります。東京には数千人規模のStartup Weekend東京コミュニティがありますが、それのあるべき姿の一番小さなバージョンでありたい。ただ、それだけです。

Startup WeekendのCommunityが、東京周辺の数千人がやることは、1つしかありません。それは、Startup Weekendの3日間のイベントの後でも再び集まって、もう一度起業してみるというすごく単純なことです。今回はそこの彼らとチームを組んでやるけど、そのチームがケンカ別れしたとか、倒産して潰れたとしても、そこで諦めては駄目ですよね。

そのときに、東京にあるSW東京Communityの他のメンバーと組んで、また起業をやってみる。起業体験を繰り返してやっているだけ、それがStartup WeekendのCommunityです。本物の起業体験を重ねれば、繰り返せば、成長できます。わかります。それがStartup Weekendの本質です。やってみて、学びましょう。それをやりたいです。

だから、このMicro Editionはずっと繰り返して、本物の起業体験をやるつもりです。今回参加しました、A社をやります、次回はメンバーが抜けて、自分1人で参加して、B社をやるというのもありです。繰り返して参加するのもありです。

また、現実に起業するときは3日で終わることはないですよね。月2回開催しているので、連続で参加するレベルに到達しなかった場合は、間をあけて3ヶ月後に進んだ進捗を持ってきて参加して、メンターとやり取りをするというのもありです。そういう使い方をしてください。

これからずっとMicro Editionに参加して、実際ローンチまでしてみる、そういう経験をしてほしいです。それがMicro Editionの発想です。

新しい取り組み「Techstars Anywhere Accelerator」について

Startup Weekend Tokyoのロゴが今回から変わりました。変わったロゴにはTechstarsのロゴが入っています。Techstarsはアメリカのアクセラレータで、300億円規模のお金をもっているVCです。彼らがStartup Weekendを買収し、今はTechstarsの一部としてStartup Weekendが動いています。

Techstarsのロゴを出すようになった理由としては、TechstarsはStartup Weekendを買収したけど、思うような効果がなかったため、ロゴを一緒に掲載することで認知向上をしたいんだと思います。この状態で伝えたいのは、TechstarsはY Combinatorと並ぶ、全世界で三本の指に入るアクセラレータでありVCだということです。

基本的にVCは、ローカルでしか投資をしないです。東京のVCがシリコンバレーのスタートアップに投資する話はあまり聞きません。国を超えると会社の法律やお金の問題があるため、東京のVCは東京でしか投資をしないし、同じ国内であっても福岡に投資することですらレアなケースです。そのためY Combinatorや500 Startupsは日本にも進出するなど、世界各地にローカル版をつくっています。

そんな中、Techstarsは新たにバーチャル版の「Techstars Anywhere Accelerator」をつくってきました。投資額も同じ、期間も同じ、彼らが受け取る株の割合も同じ、アクセラレーションプログラムです。しかし、バーチャルなアクセラレーションプログラムなので、彼らはアメリカにいるのに、日本のスタートアップでも投資を受けることができる、というプログラムです。

その新しいプログラムは応募を受付中で、2017年10月15日が締切りになります。Startup WeekendのCommunityから、そのプログラムにチャレンジしてみるのも、私はいいと思っています。なぜなら、このプログラムに採択されたら、投資を受けるだけでなく200人規模のメンターからメンタリングを受けることができます。

グローバルなプログラムなので、入るのは難しいのですが、Startup Weekend のオーガナイザーからの推薦があれば、加点評価をするということになっていて、各地域から良さげなスタートアップが出てきた場合はオーガナイザーが推薦してくださいという連絡がありました。

今月、私はシンガポールでTechstarsのサミットがあり、現地へ行くことになっています。そこでもう一度、「Techstars Anywhere Accelerator」についての話ができると思います。日本で良いスタートアップがいて、推薦したいという話が言えるんです。グローバルレベルのプログラムの中では、これが皆さんにとって一番入りやすいハードルの低いプログラムだと思います。そういうことにチャレンジしてみる、目標を決めてやってみるのもありだと思いますので、考えてみてください。

再度、Startup Weekendとは本当のところ何なのか?

Startup Weekend のことをもう一度おさらいすると、「54、3、1」の数字、わかる人いますか?最初に日本でStartup Weekendを開催したときのキャッチコピーは「アイデアから会社をローンチするまでを54時間でチャレンジしてみましょう(54 hours from idea to Launch)」。私たちがMicro Editionで取り組もうとしていることと同じことです。

そのときから、54時間という数字から出てきたのですが、金曜日から日曜日まで寝ずにすごせば54時間になります。Micro Editionも寝ずに仕事をすれば、54時間使えますよ。この54時間の次に「3」という数字がでました。この「3」という数字が出てきてから、Startup Weekend がコケ始めました。

なぜ?みんなが誤解するからです。金土日の3日間で①チームづくりをします、②自由時間です、③最終プレゼンをして終わらせます、というイベントだとみんな誤解するんです。それは絶対に誤解です。正しくは、①起業する、②起業する、③起業する、つまりスタートアップをずっとやっていきましょうということです。

3日で終わらなくていいから、1日目、2日目、3日目をここで一緒にやりましょうというのがStartup Weekend の本質です。ですから「本物をやりましょう」ということですよ。ではスタートしましょう。

「本物の起業」をやりましょう。それがStartup WeekendのCommunityです

本物の起業をすることで、何ができるかというと「やってみて学ぶこと」です。起業家として何かを学ぶときに、先生や先輩からということとして、有名になった社長などから学べることもできるはずですが、彼らが教えてくれなくても、自分一人でも学べる方法があります。

それは、本当のことを、本物の起業をやってみることです。それがStartup Weekendです。真似事とか実験ではなく、本当のことをやりましょう!ということです。Micro Editionは特にそのことを意識しています。実験ではなく、お試しではなく、本当のことにチャレンジしてください。

ところで、本当のことと実験、お試しのとの違いは何だと思いますか?本物の起業と、起業の真似事(振り)の差はなんだと思いますか?起業家の振り、起業の振りも駄目です。本物の起業をすることの違いは?

それは「失うこと」があるか、ないかの差です。振りをすることでは、失うことはほとんどないですよ。「ふざけただけでしょ」ということで、お笑いで終わりますが、本物の起業をやると、信用を失って、お金を失って、友達が逃げて、親戚から変な目で見られたり、失敗したらバカにされたりするんです。そのリスクを背負って、本物の起業をやって欲しいんです。そのリスクを負わないと学べませんよ、ということです。だから、ぜひ本物にチャレンジしてください。

何度も繰り返しますが、Startup Weekendに参加した3日間だけで終わらず、ずっと起業に取り組んで欲しいんです。起業家として、より良い起業家になる方法は、本物のスタートアップを経験してやることです。そして、それを一緒にやりましょう、「やってみて学ぶこと」をずっと繰り返していきましょう、というのがStartup WeekendのCommunityです。

わかってもらえましたか?これから先、Startup Weekendのことを説明する機会があれば、「とりあえずやってみるんだよ!と、マネやごっこじゃないよ!」と伝えてください。例えば、子どもに職業体験がさせることができるキッザニアみたいなのじゃないですよと。起業家のコスプレをして、「わたしは起業家になりました」というのは違うと。そういうことです。

Startup Weekendのルールは?

スタートアップウィークエンドのルールが分かる人はいますか?「ルールはない」。ルールがないのがルールです。なんでもありですよ。ここの場所が狭いから、人を連れてきたら迷惑だろう。違いますよ、連れてきたい人がいるなら、連れてきてください。

ここが暑いから、作業場がうるさすぎるからというなら、家に帰って作業してください。ここに帰ってくる必要はないです。本当のことをやってください。「東京でローンチしたけど、成長しづらかった、顧客に伝えにくかった。でも北海道なら売れそうだ!」ということなら、北海道まで行ってきてください。帰ってこなくていいから。

本当のことをやってください。私達、Startup Weekendのミッションは、皆さんを起業家に変えることです。それだけです。

Micro Editionに入る前に知っておいて欲しいことについて

ここまではStartup Weekendのことの宣伝でした。これからはMicro Editionの説明をします。ちなみに、先程みなさんから話を聞いてわかったのは、みなさんの今の悩みは、「なにをやるか、これから先を歩くための基本がわからない」ことだということです。前回、説明会で使用した資料があるのですが、今の状況だと、今日はその時の内容を詳しく話したほうがいいかなと思っています。

ところで、起業家として起業するとすぐに終わらないですよね、起業すると先は長くなります、つまり長く作業をするためのテクニックが必要となります。よくあるのが、作業の途中で堂々めぐりをしてしまう。でも自分で何を堂々めぐりしているか気づかない。

そのまま、同じことを繰り返して、(例えば、ある仕事をはじめて6時間後に、6時間前と同じことを繰り返してやってるのに、そのことに気づかず)さらにそのまま終わってしまうことです。そういうことが起こりやすい、起こってしまうということは、私がStartup Weekendで8年間いろんな参加者たちを見てきて、わかったことの一つです。

そこで、まずみなさんには、作業を長くする時に必要なテクニックを伝えたいです。それともう一つ、自分以外の人と仕事をするテクニックを持っていない人も多い。1人でやる場合は問題がないのですが、2人以上になってくると話が進まなかったり、作業が進まなかったりするんです。

その2つのテクニックについて少し話しましょう。この2つのテクニックは、ビジネスモデルやビジネスのアイデアの話のもっと前段階の話です。そのテクニックを伝えるので、そのテクニックを駆使して、この3日間のMicro Editionに取り組んでみてください。

この2つのテクニックを話す前に、前提として伝えておきたいのがもう1つあります。それは、「分かれば出来るだろう」という根本的な勘違いがあるということです。なんでもかんでも、学べば使えるだろうという。

でも、今から皆さんにゴルフのやり方を教えたとして、ホールインワンの打ち方を丁寧に教えたところで、みなさんが実際にゴルフのクラブを打ってもみたら、うまくできず飛ばないですよね。左にいったり、右にいったりするんです。頭の中ではできていても、皆さんの身体がついてこないから、打ち方が分かっていたとしてもホールインワンをすることはできません。

今までもそうですが、私は皆さんに知識を教えたいのではなく、皆さんを起業家というプレイヤーになれるように鍛えることをしたいんです。Micro Editionは、Startup Weekendのライザップ版と表現しているくらいです。私が今話した内容を実践してほしいんですよ、それを是非やりましょう。ビジネスのロジックやノウハウも踏まえて、今から伝える2つのテクニックもぜひ実践してほしいです。

「長く仕事をするために一番重要なテクニック」について

まず1つ目です。「長く仕事をするために一番重要なテクニック」はなんだと思いますか?自分の今の現場、職場で長く仕事をするときに、なにか使っているテクニックはありませんか?仕事を長くするとき、ある1つのプロジェクトに長く関わるとき、どういうテクニックが必要でしょうか?

楽しくやる?とても重要です。心が折れないことですよね。すごく重要ですが、それは私が今言いたいテクニックではないです。自分ひとりでもいいから、同じサブジェクト、課題に長く関わってやるときに使うテクニックです。

自分の成果を振り返ってみる?そうそう、過去に何をやったかということを忘れないこと。先ほど、私が言ったように、人は6時間、24時間、3日間などなど過ごした後に、前にしたことを繰り返してやってしまうのです。「自分が何をやったか」ということを覚えていない、忘れてしまう。それが一番駄目なパターンです。

基本的に長く仕事をするときは「自分の過去のヒストリーをすべて覚えること」が一番重要です。さらに覚えることに加えて、もう一つあります。それは何だと思いますか?自分のヒストリー、自分が過去にやってことをすべて覚えることにプラスして、なにが重要だと思いますか?

みなさんの仕事のクオリティがプロレベルではなく、正しい判断ができない、正しいことを知らない、そういう状態で仕事に取り組むと、過去のヒストリーが間違いだらけになります。何を間違えたかということは時間が経てば経つほど、古いものを見れば見るほど何を間違えたかということに気づきやすくなります。

過去のヒストリーを記憶すること、かつ過去のヒストリーから間違えたことに気づいて、学ぶこと、その学ぶことをずーっとやらないといけないです。昨日までデータを見てても気づいていなかったことでも、1週間後にもう一度みたら気づくことがあります。ヒストリーを記録して、覚えること、そこから学んで改善すること、その2つをやらなくてはいけないんです。

具体的なやり方は「壁」を使います。壁に自分の作業を記録して保存します。かつ、この保存した記録は検索できないといけない、ブラウジングできないといけないです。手順はこうです。

まず自分の作業をする壁を決めます。その決めた壁に自分の作業した内容をすべて記録していきます(付箋に書いて貼るなど)。できるだけ記録しておいてください。そして、家に帰る前にその壁をもう一度眺めてみる。明日来た時も、もう一度壁を眺める。また次に何か別のアクションに進む前にまた眺める、ということをずっと繰り返すんです。

ニューヨークを拠点とするブログサービスで有名なスタートアップに行ったときに、オフィスのすごく長い壁が全てそのように使われていました。「これは何なの?」と聞いたら、この取組みをしているということでした。

自分がやった作業をすべて記録して壁に残しておいて、それをチーム中で共有できるようにしましょう。今回は6チームなので、このオフィスのスペースの中で自分たちの壁を決めてください。最初のうちは記録を残すノウハウがないため、空間の無駄づかいもあると思います。

やればやるほど、効率化がよくなったり、アーカイブするテクニックも出てくるので、まずはやってみましょう。付箋に作業したことを書いて壁に貼って記録します、そこから眺めることができるようにします、そこから学びます、というのが基本ですよ。

「他人と仕事をするときのテクニック」について

次に「他人と仕事をするときのテクニック」についてです。知ってる人はいますか?1人ではなく、誰かと一緒にチームとして一緒に仕事をする時のテクニックです。それは「コミュニケーションの負荷を減らすこと」です。とりあえず、話し合いの時間が長くなることはやめましょうと。打ち合わせが1時間になることをやめてほしい、打ち合わせは5分、10分で終わらせたいですよね。

コミュニケーションの負荷が非常にかかる例として、知らない人と仕事をしながら相手を納得させようとするとき等があります。そこでインダイレクトコミュニケーション(間接的なコミュニケーション)の方法論を取り入れるべきです。直接話さない、誰かと話をしたいことがあるときでも直接話をしない。どうやって話すのか、壁に話すんです。

ここでもう一度、壁が登場します。わたしが全員に伝えたい情報があった場合、壁に貼っていきます。そして、私からは直接、個別に伝えない。この時のルールは、壁には常に新しい情報が必ずあるということだけです。壁にある情報は個々人が自分の都合によって、アップデートしてください。私の言いたいことはすべて壁に残してあるから、それを知らないのは、あなたの責任です、ということです。その壁にある最新情報はコーヒーを飲みにいくとき等にも確認する。そういう決まりを作っておくだけです。

そうすると、チームのコミュニケーションの負荷がすごく減ります。なぜなら、一回壁に貼るだけで何人にもずっと喋り続けるのと同じ効果があるから。それを会社ではブログや掲示板を使ったり、Slackなどのチャットなどを活用していますが、スタートアップのチームが一番やりやすい方法は、先程の壁と同じ方法でヒストリーと最新情報をずっと載せ続けることです。それが一番無駄は多いけど、一番効率がいい。今回の3日間はそれをやりたいです。

壁を使うインダイレクトコミュニケーション、更なる効果について

実は、壁を使うインダイレクトコミュニケーションには、もう一つのいいところがあって、メンターをはじめとする部外者でも皆さんが何をやっているのか(やったのか)ということがわかりやすいんです。メンターが各チームの進捗状況がわからないときに、今どういう状況なのかを皆さんに聞くのは非効率です。

だから、今回のメンターである私が皆さんに進捗状況を聞かなくてもいいように、みなさんがやっていることを全て壁に記録してください。今回、この3日間でお願いしたいのは、そういうスタイルでやりましょうということです。壁を決めて、そこに付箋をはって記録しましょう。

付箋を使う時のテクニックについて付け加えをすると、「情報は見える化すべき」ですが、それだけでは物足りないです。もう一つの効果を狙うとして、見える化よりも、もっと情報の効率をよくするためのレイヤー、それはなんでしょう?検索できること?それも重要ですが。

答えは、「(情報は)モバイライズ(mobilize)できること」です。動かせること、それが何を意味することかというと、やってみればわかります。自分の固定観念に捕らわれて、気づいていなかった思い込みが見えてくるんですよ。モバイライズで情報の形が変わったとき、順番が変わったときに「こういう考え方でやったことない」というものが見えてくるんです。壁をつかうインダイレクトコミュニケーションでよくあることであり、重要なポイントです。

(例えば)自分がアップデートした情報の中に、誰かが情報を持ってきます。そのときに、その順序、位置を変えるだけで、(例えば付箋3つの順序を変えるだけで、)全然別のストーリーラインになるんですよ。情報の見える化とモバイライズをするために、基本的に「情報」には「付箋」を使います。ホワイトボードに文字を書くのは基本的に効率が悪いです。だから、ホワイトボードはつかわないほうがいい、ホワイトボードを使うと固定概念に捕らわれるから(モバイライズが出来ないから)。すべての情報は付箋を使って残しましょう。あとでアーカイブという効率化をして、保管情報に変換するときも、付箋のほうが使いやすいです。

他人と長く仕事するときのテクニックに加え、まだ未熟である時のテクニックについて

ここまで説明してきたことが、ビジネスにおいてチームで作業する際の基本テクニックです。ところで、スタートアップとして素早く動くときに、相手と意見があわず喧嘩になったとしても一歩も動かないのは駄目ですよね。その時でも、意見が合わなくなった場合でも、先に進むためには何をしたらいいですか?

投票すればいいです。じゃんけんでもいいから、投票を通して先に進んでください。皆さんや私達の(起業家としての)レベルが低いときは、正しい選択ができないし、正しいことができない、そのときにできることは?あとで反省する、反省して治すこと。それを、できるだけ素早く、出来だけ効率よく、やっていく。

だから、自分が何を間違ったかということが、必ず早く現れるようなスタイルで仕事をすること。結果から、どこを間違ったか、どこが駄目だったか、ということがわかるスタイルで仕事をすること。間違いがわかった時点で反省して治すこと。それだけです。それをずっとやってきましょう。それが基本スタンスですよ。

お互いが納得いかないときに、お互いが納得するまで議論することは無駄です、そこじゃないです。納得いかない?それなら両方やってみる。両方やった上で、反省が出来る状態までにしてください。何を間違ったか、何が良かったかが分かる時点まで、とりあえず走る。

そこで(後ろを見ながら)、ここではあれが間違っていた、それはここで間違った等が分かったら、例え今までの仕事分を元に戻してでも、また走りだすんです、それだけです。

繰り返しになりますが、スタートアップが前に進むための進み方は、一歩一歩慎重に歩くのではなく「進んでは戻って」をとても早いスピードで行いながら徐々に前へ進むということです。そういうスタイルで動くんですよ。

何をやりたいか決まっている、その先に行動すべきこと

ここまでは仕事のテクニックの話でした。ここからは、ビジネスの話をしましょう。

これまで私がメンタリングをやってきて分かっているのは、私が話をしすぎると皆さんがお腹いっぱいになって、結果的に使えない状況=消化不良になってしまうということです。なので今、私が言いたいことは、一歩先の話だけです。

みなさんは何かをやりたいというアイテムを持っています。でも、その一歩先に何をするかという行動が決まらないんですよね。まずは今、自分の中で考えているアイテムを見える化しましょう。見える化することで何が見えるかというと「一歩先にどんな行動をとるべきか」ということが見えてきます。

その時の行動のだいたいは、私がMicro EditionのLPに記載したスケジュールに書いてある「顧客獲得」です。顧客獲得がなにか分かる人はいますか?「AARRR」という単語に集約されていますが、顧客獲得の次はなにでしたっけ?

英語圏ではパイレーツが突撃するときに「アーッ」と声に出すということで、Pirate Metrics(海賊指標)と言われています。AARRR、この5つのアルファベット、最後のRがRevenue(利益)です。

利益にたどり着くまで、起業のプロセスとして、①顧客をAcquisition(獲得、見込み客を集める)、②獲得した顧客をActivation(開始、見込み客から【代価を支払い済みの】顧客へ成り替わる)する。そして、③獲得とアクティベーションの次が、一回使った人が逃げないように、帰ってくるように仕向ける、Retention(継続)。保持する。その次が、④例えば、これをやったら、昨日まで一人だった顧客が今日は三人になったという人為的な顧客獲得プロセスだけでは不十分で、その三人が更に(勝手に)ほかの顧客たちをたくさん連れてくるという2次増加(人為的より自然的な増加)が発生すること、Referral(紹介)。そうしないと、自分だけが毎日毎日新規顧客を獲得しようと頑張るというとっても効率悪いことになってしまいます。その後に、⑤お金がたまります、Revenue(利益)が発生しますという話が、Pirate Metrics(海賊指標)です。

Pirate Metrics(海賊指標)は、今日現在ビジネスを立ち上げるときの一番基本の根本理論として、誰も文句を言っていない理論です。これを提唱したのは、500 Startupsの創業者で、世界中で有名な投資家の一人Dave McClure氏です。彼のこの理論以外で有名なものを、なにか知っていますか?

AARRRを定着させたDave McClure氏よりも前に、Steve Blank氏が提唱している理論も勉強してほしいです。Steve Blank氏がシリコンバレーでスタートアップの成功事例を見て、「The Four Steps to the Epiphany(アントレプレナーの教科書)」を書き、スタートアップの立上げの理論を提唱したのは2006年と10年以上前のことです。

当時は良かったものの、2017年現在では少し使いづらいということで、今はPirate Metrics(海賊指標)のAARRRのほうが使われるようになりました。しかし、Steve Blank氏の理論は、BtoBで実は今も効率がよいと言われています。自分のビジネスモデルがBtoCなのか、BtoBなのか、O2Oか等によって、使える理論が違ってきます。

私のメンタリングは基本的にPirate Metrics(海賊指標)でやりますが、BtoBのビジネスの場合は、Steve Blank氏のことを調べてみて、彼の理論を勉強するのもありです。

ここまでにして、ここからは残りの時間はみなさんの作業の時間にしてもらいます。さあ、はじめましょう。

(ここまで)

長いテキストを最後までお読みいただき、ありがとうございました!続きの内容として、より実践的な後半部分の記事も下記にて公開中です。ぜひご参考ください!!

次回の「Startup Weekend Tokyo Community Micro Edition」は、2017-08-25(金)18:30 – 2017-08-27(日)21:30で開催予定です!みなさんのご参加を心よりお待ちしていますね!!
・Startup Weekend Tokyo Micro Editionの告知ページ


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