メンバーインタビュー Vol.3 嘉山 健一さん(合同会社プロテカ)


嘉山 健一さん プロフィール

1983年静岡県生まれ。専修大学法学部卒業。大学在学中より、ビッグコミックスピリッツ編集部(小学館)にアルバイトとして所属。卒業後も同編集部にて『ホムンクス』『アイアムアヒーロー』『7人のシェイクスピア』など、数々の有名作品に関わる。

漫画の制作現場に携わる中で、「今後も “出版社と漫画家が良好な関係で居続ける”ためには、出版社だけでなく、漫画家側にも法律のプロが必要」と感じ、漫画家のヒアリングなどを経て、自らがなろうと決意。2012年大宮法科大学院大学(夜間主コース)に入学。2013年大学院の統合を期に、桐蔭法科大学院へ移籍。2017年桐蔭法科大学院修了。2018年合同会社プロテカ(クリエイター専門の法務コンサル会社)を設立。
現在も漫画制作に関わりながら、“予防法務”の観点から顧問弁護士らと共に、漫画家などのクリエイターに対する法務サポートや契約書管理などを行っている。

1.現在の事業内容について教えてください

― まず、合同会社プロテカの主な事業を

漫画家の法務ケア

会社としては、漫画家の法務コンサルと言えばいいでしょうか、法務まわりのケアをすることが主な仕事です。

― 漫画家さんに特化して?

僕が漫画の編集者として仕事をする中で、漫画家の権利について問題意識を持ったことから、会社を立ち上げることになったんです。ただ事業の対象は漫画家だけでなく、登記簿上も、「クリエイターを対象にした法務コンサル」としています。

実際、ご縁をいただいて、漫画家以外のクリエーターさんやゲーム会社など法人の契約まわりの仕事などもさせていただいています。

― 具体的に「法務まわり」とは契約関係ということですか?

そうです。契約書へのアドバイスをはじめ、弊社顧問弁護士への仲介で、弁護士による具体的なアドバイスや契約書作成も可能です。そこは法律上、少し複雑で、弁護士の業務範囲になる部分は、顧問弁護士にリーズナブルな価格で依頼ができるという仕組みです。

― リーズナブルなんですね?

リーズナブルだと思います。普通に弁護士に依頼するよりははるかに。それにはちゃんと理由もあるんですが、それはあとでお話ししますね。

― アドバイスとは、例えば出版社が作成した契約書を見て、「ここをちゃんとしたほうがいい」とか?

嘉山

はい。漫画家は作品作りについてはプロフェッショナルですが、それ以外のことについては疎いというか、法律のことを知らない人が多いんです。出版社が出してきた契約書を読まずにサインして戻しているという人がほとんどです。その結果、トラブルになることが希にある。それを僕は近くで見ていた。それは出版社にとっても漫画家にとっても良くないことじゃないですか。

― 個人事業主であるクリエーターと大手出版社では、契約書に対するリテラシーにも差がありそうですね

嘉山

はい。だから漫画家を対等な立場にしたいと。出版社には法務部があり、顧問弁護士がいますが、漫画家には誰もいない…。漫画家も言うべきことは言えるタイミングでしっかり言って、その上で出版社と漫画家が良好な関係で作品作りに没頭できるようにと考えたんです。

出版社と漫画家が仲良くやってほしいという気持ちが大前提です。ですから、決して出版社と対立するとか、喧嘩するとか、決してそういうつもりではないんです。

北海道白糠町を舞台に映画制作のプロデュースを

嘉山

今、北海道白糠町(しらぬかちょう)を舞台に、アイヌ民族やその文化をテーマにした映画制作のプロデュースをさせていただいています。

嘉山

話せば長くなりますが、きっかけは、白糠町のふるさと納税のパンフレットです。僕が20歳からお世話になっている居酒屋の大将が、白糠町の隣町の音別町出身で、白糠町から魚介類を仕入れていた関係で店にパンフレットが置いてあって。パラパラと見たら、写真は多いけどイラストが少なくて…「漫画のキャラクターを使うと良くなりますよ」と言ったんです。そうしたら大将が「じゃあ、町長に連絡してみるわ」と言って、目の前で白糠町の町長さんに電話をかけだしたんです。

「失礼だから辞めてくれ」と言っているうちに、町長が電話に出られて、そのまま少しお話しをさせていただきました。その電話の中で「よろしければ一度遊びにきてください」、「はい、行きます」という話になって、白糠町行きが決まりました(笑)

ちょうど担当していた漫画家のお一人が避暑のため1週間後から釧路に行かれる予定だったんです。で、打ち合わせも兼ねて北海道に行こうと思って、彼に連絡をしたら「白糠町? 面白そうだね。俺も一緒に行くよ」と。

さらにその話が、また別の漫画家さんに伝わり、結局、町長との電話から間もなく、僕は二人の漫画家さんと一緒に白糠町にいたんですよ。滞在中に、白糠アイヌ文化保存会の会長さんも紹介していただきました。

(左から)棚野孝夫町長、山本英夫さん、アイヌ文化保存会の磯部恵津子会長、ホリユウスケさん、嘉山健一さん(2019 応報しらぬか9月号

皆さんが白糠町を訪れた時のことが掲載された「2019 広報しらぬか9月号」

嘉山

その時に、「これから面白いことをやっていきましょう」という話になりました。いろいろなアイデアが出たんですが、最終的にアイヌをテーマにした映画を作ることになりました。僕もそうですがアイヌのことを知らない人に、アイヌについて知ってもらえて、かつエンターテイメント性もある映画を作ろうということでプロジェクトが立ち上がりました。もう2年以上も前なんですけどね。

― 人と人のつながりで話がどんどん話が大きくなっていきましたね

嘉山

はい。今、監督・脚本・制作会社が決まっていて、これからキャスティングが始まり、いよいよ制作に入るというところです。脚本は、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」の尾崎将也さん、監督は、こちらもNHKで放送されていた「タイムスクープハンター」の中尾浩之さんです。あと、僕の大きな仕事は資金集めです。


― この続きは、また後ほど

2.創業しようと決めたきっかけは何ですか?

自分の中に芽生えが問題意識、それを解決するために法律を学ぶ

嘉山

漫画編集部で漫画作りに携わる中で、出版社の人間として漫画家さんへ契約書をお持ちする時、会社から渡された契約書をただ渡すだけのことをしていたんです。ある時、ある漫画家さんから「これは一体何を書いてあるんだろうか」と聞かれて、「個人情報でもあるので、内容は確認していないんですけど…」というような答えしかできなかった。

同時期に別の漫画家さんが契約書で出版社と揉めるということがあって…「漫画家は内容を理解せずにサインしているんだな」「理解せずにサインすると揉めるんだな」ということが分かりました。

そんなことが重なって契約に関する問題意識を持ち、僕が漫画家側の法務をサポートできる存在になって、この問題を解決できるようになれればいいんだと思うようになったんです。そこで創業という気持ちが芽生えたという感じです。

― 明確な創業の動機ですね、そしてロースクールへ

嘉山

はい。では、何をすればいいんだろうと。僕は、大学1年生の時から小学館でアルバイトをしていて学業は真面目にやっていなかった。でも一応法学部出身なんです。そういうバックグラウンドもある上で、「早い話、弁護士になればいいのか、よしロースクールに入ろう」と思いました。

とはいえ、そうなると多くの自分の時間とお金を費やすことになるわけですから、まずは、自分の問題意識が正しいかどうかを探ってみました。身の回りの漫画家さん十数人に、自分が考えていることを話してヒアリングをしました。そして「僕が弁護士になったら、仕事を頼みたいですか?」と聞くと、全員が「頼むよ」と言ってくれました。これだけの人が、そう言ってくれるならニーズはあると考えてロースクール受験を決心しました。

嘉山

仕事を持っているので、夜間主コースを探して応募しました。で、見事に全滅しました。その後1年間、予備校に通って、28歳で大宮法科大学院に入ることができました。2年目になる頃に桐蔭法科大学院と同校が合併、僕は神谷町にある桐蔭の東京キャンパスに通いました。仕事の都合もあり、自分の学力不足もありで、結果、5年かけて33歳で卒業。ロースクールの最長在籍年数は5年でしたので、本当にギリギリで卒業ができました。

こうして、晴れて法務博士という学位を得て会社を立ち上げたという感じです。

ロースクールの同期生が専門家としてバックアップ

嘉山

でも、ロースクールを出ただけで僕には法曹資格がない。この資格がないとできることが限定されてしまうんです。そこで弁護士になるか、弁護士を雇うかという選択を迫られた。考えた結果、ロースクールを首席で卒業して司法試験に一発合格した同期生に顧問弁護士になってもらいました。「創業したばかりで、お金がないから、安くしてくれ」と言って(笑)

そんな関係があって皆さんにも安くサービスを提供できるというわけです。本当に、いろいろなご縁を頂いてここまできたなという感じです。

― 嘉山さんのように目の前にいる人に何をしてあげたらいいかが分かっている人が、専門家との間に入ることは大切だと思います

嘉山

そうですね。一応、僕も簡単な質問には答えられますし、紹介をするにしても、弁護士に対して、僕がかみ砕いて説明できるのでスムーズな橋渡し役になれると思います。そこはロースクールを卒業した甲斐があったと(笑)

― シェアオフィスで、ずっと勉強をしていらした姿を思い出します

嘉山

まあ、長かったですね。論文論文論文、毎週のように論文を書いていましたよ。おかげでメール文やビジネス文書などを書く文章力がちょっと上がったかなと。

― やりきりましたね

人にやらされるのではない、決めたのも、リスクを取るのも自分

嘉山

まあ、よくやったなと自分でも思いますが、もうやるしかないという状況でした。勉強に集中していた時期には、漫画家さんたちにも迷惑をおかけしました。

ただ、人にやらされていることではないという点で頑張れたかなと思います。これまでの人生の中で、ロースクールに限っては僕が自分で「必要だ」「行きたい」と思って、時間とお金も自分で払って行った。決めたのも自分、リスクを取るのも自分。それは始めての経験でした。

3.CASE Shinjukuを事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?

自宅は仕事も勉強もできない環境、縁あってシェアオフィスへ…

嘉山

もともと近所に住んでいたんです。家ではなかなか仕事も勉強もできなくて、いつも喫茶店で仕事や勉強をしていました。その喫茶店の常連でマスターと顔見知りだった地元の女性が「駅の近くにコワーキングスペースができるらしいわよ」と教えてくれて。内装工事中の内覧会に来て、それから数ヶ月たってオープンしたと聞いて、また見に来て、それでお世話になるようになりました。

朝から晩まで、いや深夜までここにいましたよね。本当にCASE Shinjukuがあったおかげで卒業できたと言っても過言ではないです…(笑)

― 漫画家さんとの仕事でも使っていただいていますね

嘉山

結構、いろいろな漫画家さんが打ち合わせなどで来ますよ。「ホムンクルス」や「HIKARI-MAN」の作者、山本英夫先生は、時々、ここで仕事もされていますしね。

― 嘉山さんが紹介してくださって漫画家志望のメンバーさん作品が採用されたということもありました

嘉山

小学館の編集者と、ここで引き合わせてデビューした。ここは、いろいろな人の人生に影響を与えている場所じゃないですかね。

― 良い出会いの場になっているようでうれしいです

嘉山

結局、人とのつながりですよね。本当に、それに尽きると思います。白糠町との出会いから、映画の制作を手掛けることになるのもご縁あってのことですし、制作資金集めも、自治体やアイヌの方々をはじめ皆さんの応援と協力があるおかげで、僕の力ではないですからね。

― 嘉山さんのお人柄が縁を呼ぶのだと思います
 そして決して仕組んだわけではないのに自然の成り行きでスイスイと事が運ぶことってありますね

嘉山

そうそう、白糠町のことも、荻窪の行きつけの居酒屋で見つけた1冊のパンフレットをきっかけに、たまたま二人の漫画家さんが同行してくれて、それからの映画制作ですから。実は他にもまだまだいろいろな偶然が重なって今に至っているわけなんですが、本当に恐ろしいくらいパンパンパンパンと物事が運んだという…。

4. 今後の事業展開、ビジョンについて

嘉山

そうですね、法務関係の仕事は、粛々と周りの漫画家さんやクリエーターさんの役にたてるように仕事をしていく。そして、この取り組みについて、範囲を広げて賛同してもえるようにしたいですし、求められれば、多くの漫画家さん、クリエーターさんにご協力したいなと思います。

映画を成功させる

嘉山

映画においては、まずスケジュール通り完成させて全国ロードショーを目指します。この映画が多くの人にアイヌ民族のことを知っていただくきっかけになればいいと思っています。

― そうですね、世界中に少数民族の問題はありますし、世界中の人が見る映画にしてください!

嘉山

そうですね。脚本の尾崎さんや中尾監督とは「アカデミーショーを狙いたいよね」と。それくらいの気持ちで作ろうと話しています。

― カンヌでもいいですね!

嘉山

外国の映画祭に出したいですね。今回の映画には億単位の制作費をかけます。これまでアイヌをテーマにした映画は少額で制作されたものを興味のある人だけが観ていた。今回は、キャストにも相当な予算を付けます。アイヌに興味があろうとなかろうと出演者のファンだから観たいという人も巻き込む。それがきっかけでアイヌのことを知る人が出てくるわけです。それが奇想天外な話ではまずいという意見もあって、フィクションではありますが、時代考証をしっかりと行った大河ドラマのような映画になると思います。

― そのための資金集めも嘉山さんの仕事なんですね

嘉山

はい。そうです。資金はいろいろな方法で集めます。

まず、ふるさと納税です。白糠町は、人口7千500人に満たない自治体ですが、2020年の総務省の統計で、寄付額全国4位で約97億円を集めたという自治体なんです。ふるさと納税は、納税をする際に、その使い道を指定することができます。そこで「白糠町をロケ地とする映画制作支援」を選択していただくと、それが映画制作の資金の一部になります。個人的にもいろいろな方に呼び掛けをしています。CASE Shinjuku でも、パンフレットを置いてもらったり、メンバー交流会の時に紹介させてもらったりさせていただいています。

白糠町の「企業版 ふるさと納税」の案内ページと嘉山さん

― 企業版ふるさと納税も

嘉山

ふるさと納税には、企業版もあるんです。

白糠町では、「アイヌ民族をテーマにした映画・XR製作~『ウレシパ・シラリカ』ロケツーリズム推進プロジェクト~」と寄附対象として、企業版ふるさと納税を募集しています。

プロゴルファーの松山英樹さんも使われているパターメーカーのスコッティキャメロンの日本の正規輸入代理店さんなどの企業、また漫画家さんも山本英夫先生など何人か既にご協力いただいています。

企業版ふるさと納税は、ざっくりお伝えさせていただくと、例えば1,000万円寄付すると、最大約900万円の法人関係税(法人住民税・法人事業税・法人税)が軽減されます。基本的には個人のふるさと納税とほぼ同じですが、返礼品はありません。

メリットとしては、映画のエンドロールに名前を入れさせていただくほかに、撮影見学などを考えています。まだ検討中ですが、映画のチケットをお渡しするとか、DVD化の際にDVDお送りするとか、いろいろなことを考えています。

また、このプロジェクトは、SDGsの17の目標のうち4項目を達成するプロジェクトとなっているので、SDGsの目標達成に貢献していることをアピールしていただける取り組みでもあります。

― CASE Shinjuku でも、企業版ふるさと納税を検討しています!

嘉山

ありがとうございます!

CASE Shinjuku の皆さんと、一緒に白糠町に行きましょう!

東山公園から見下ろす白糠町の風景

5. 趣味・特技・自慢話

― 趣味や特技、ちょっとした自慢話などが、人と人がつながるコネクターになったり、趣味や特技が誰かの役に立ったり、仕事につながったりということがどうもあるような…という主旨で趣味、特技、自慢話をお伺いすることにしています

趣味は旅行、特に沖縄が大好き

嘉山

趣味も特技も特にないです。自慢話もない。まずいですね(笑)

好きなことは、旅行に行くことです。特に東京よりも西や南に行くことが好きで、なかでも沖縄が好きです。一時期は、1年のうち、行った回数や滞在日数はまちまちですが足したら1カ月半くらい沖縄にいたくらい沖縄が好き。今はコロナで行けないんですけど、読谷村の友たちと「模合(もあい)」をやっています。昔からある仲間内での互助会です。

― いわゆる庶民金融ですね

嘉山

そうそう。例えば12人で毎月1万円ずつ出し合って、集まったお金を順番に渡していく。自分の番が来れば11万円がもらえるという互助会のようなものです。全国で、いろいろな名前で行われていて、沖縄では「模合」と言います。今はお金というよりも集まって飲む理由なんですよね。毎月、決まった日に集まる。それで顔を見て一緒に飲んで…、いい文化だなと思います。

― 沖縄と北海道

嘉山

そうなんです。沖縄がすごく好きすぎて、いつか沖縄に民宿を建てたいと思ってるんです。クリエイターが羽を休めたり、そこでアイディア出しができるような。…と思っていたら、なぜか北海道と縁があったっていう。

ということで、旅行が好きです。趣味です(笑)

6. メンバーの皆さんへの呼び掛け

嘉山

CASE Shinjuku は、本当に素敵な場所だと思います。ここでの出会いがきっかけで漫画家デビューした子もいれば、ここで頑張って就活して漫画編集者になった子もいる。面白いですよね。

白糠町へのふるさと納税(企業版・個人版)をお願いします!

嘉山

会社経営者の方は企業版と個人版で、個人事業主の人は個人版で。白糠町へのふるさと納税を宜しくお願いいたします。パンフレットはCASE Shinjuku に置いてあります。ご興味を持っていただけた方は、是非、持ち帰って検討してください。

― 嘉山さん。ありがとうございました。みんなで白糠町を訪れる日を楽しみにしています!



この記事を書いた人

シェアオフィス&コワーキングスペース CASE Shinjuku

CASEには、背景、課題、事例、真実、箱などの意味があり、「様々な背景を持つ人たちが集まり、交流や出会いを得ることで、それぞれの課題を解決出来る空間」、「解決された課題を事例として蓄積し、真実に近づくことが出来る空間」という想いを込めています。

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