めがねさんがLeeさんに「Startup Weekend Tokyo Community Micro Edition」について聞いてみた!


新宿区高田馬場にあるシェアオフィス&コワーキングスペース CASE Shinjukuの森下です。
CASE ShinjukuのWEBサイトで「Startup Weekend Tokyo Micro Edition」というStartup Weekendの小さいのをやるという記事を読んで、ちょっとこれすごいっぽい、もう少し知りたいと思っためがねさんに「Startup Weekendのことをよく知らない私が疑問をぶつけるからそれに答えてもらって、また記事にしたらよりよいではないですか」と、言われるままに記事にしてみました。

【参考サイト】
※Startup Weekend Tokyo Micro Editionについて基本的な情報は下記サイトでご確認ください。
Startup Weekend Japan(公式サイト)
・Startup Weekend Tokyo Micro Editionの説明会が開催されました!(CASE Shinjuku 記事)
・Startup Weekend Tokyo Micro Editionの告知ページ

 

聞き手:mgnさん(mgn株式会社 代表 めがねさんこと大串肇さん)
受け手:Leeさん(NPO法人StartupWeekend 理事長)
記 録:森下ことみ

 

Startup Weekendとは?

mgn:まず、Startup Weekendとは、週末だけを使ってメンターに助けてもらいつつ疑似スタートアップをやってみて、最後にビジネスプランを発表してみんなで評価するというイベントですか? 合ってます?

Lee:間違ってます(笑)

mgn:間違ってましたか(笑)。ではそこからお願いします。

Lee:色々間違ってますが、今一番直したい部分は「疑似」というところです。擬似ではなく、本物のスタートアップをやります。あとは大体合ってますよ。細かい間違いは後で直しましょう(笑)。まず、スタートアップが三日間でできるはずがないという先入観があるからそういう発想になるのだと思います。確率は低いですが実際にビジネスをスタートさせることができます。

2014年10月CASE Shinjukuで開催されたStartup Weekend Tokyo COMICS

 

mgn:そうなんですね。そうすると例えばMashup Awardsなどよりはもう少しビジネス寄りになるわけですか?

Lee:彼らがやっているのは、自分たちが持っているリソースを掘り下げて何処までやれるかということです。Startup Weekendでは、自分が持っているリソースは関係ありません。マーケットが何を欲しがっているかを探るんです。全然、別のプロセスです。

mgn:(Mashup Awardsは)自分が欲しいものをつくる、(Startup Weekendは)人から欲しがられるものをつくる。その違いということですか?

Lee:両方とも売れると思うものを目指すという意味ではそう簡単に区別できる問題ではありませんが、自分の持っているものを使うという制約を入れるか否かの違いだと思います。Startup Weekendの肝は買ってくれる人がいないものはつくらない。人が買わないものもつくらない。つまり、純粋な本物の起業そのものです。

mgn:直接的そこにフォーカスするわけですね。

Lee:そうそう。それがビジネスですから。ビジネスを始める時、まず先に作るものは「製品」じゃないですよ。「顧客」です。そして「買うか買わないか」は簡単な話題ではありません。ビジネスは基本的に「何かを売る」という行為ですが、正しく言い換えると「問題を売ってからソリューションを売る」ということです。問題に気づいていない人には(その)ソリューションが(まだ)ソリューションではないから売れないということです。(問題とソリューションを)気付かせる作業が顧客づくり、いわゆる「顧客開発」です。そのためにはマーケットの状況を把握することが大事です。

mgn:と言うことは、Startup Weekendに参加したい人は、自分のチームとかビジネスプランとか、そういうものを持った上で参加するわけですか?

Lee:それも先入観です。もう一度言いますが、自分に何ができるかということは全く関係ないです。自分が何をやりたいかも関係ない。自分のビジネスアイテムも関係ない。マーケットが何を欲しがっているか。マーケットが何を買うかが重要なんです。だからビジネスアイテムがゼロでも、ターゲットが決まれば起業はできます。何故なら彼らが今必要としているものを探ってそれをつくればいいからです。そういう意味で、ビジネスアイテムを持っているか持っていないかということも関係ないです。

mgn:へー!そうなんですか。では参加者は個人で参加するんですか、それともチームで?

Lee:ベーシックなStartup Weekendの参加チケットには個人用しかありませんが、M版では個人かチームかということも関係ありません。何人でやるか、何がやりたいか、何ができるかということは全く関係ないんです。マーケットが何を欲しがっているのか。重要なのはそれのみです。

 

スタートアップのビジネスの立ち上げは「詩を書く」ようなもの

Lee:私の感覚だと、大会社は映画をつくるんです。そしてスタートアップは「詩」を書くんですよ。

mgn:詩? ポエム!?

Lee:映画をつくる時には数千人という人、数ヶ月という時間、数十億円というお金をかけてつくりますね。だけど詩を書くことは、一人でそんなに時間をかけないで、勿論お金がなくてもどこでもできます。でも、一篇の詩と映画一本の力はほぼ同じです。一篇の詩でも時代を変えることができるんです。常識が変わるからです。スタートアップはそこを狙うべきです。

何故なら最初から数千人、数億円を動かす力を持っているわけではないからです。力やリソース、能力がないからです。自分たちにないものを求めても仕方ない。マーケットが何をほしがっているか、それに対して自分たちに何ができるかを探していくんです。スタートアップの仕事は、今できることをやっていくだけです。

ただそこには一つだけ、すごく重要なポイントがあります。全てが一発で終わらないという原理を理解することです。例えば、LEGOブロックを一つずつ積み上げて高さ10メートルのエッフェル塔をつくるには3年はかかります。スタートアップもそうです。エッフェル塔をつくりたければ3年かかるということを覚悟すべきです。今からマーケットに参入するという時に、自分たちが未来のマーケットを支配する夢を持ちます。でもその夢の実現までは時間がかかります。その道のりには手順があって、成長の過程でステージが発生します。だからこそ、今この瞬間、今日、今週、今月、何をするかが決まる。日々それを続けて行く。それがスタートアップのビジネスの立ち上げです。

 

Startup Weekend Tokyo Micro Editionはフォーマットゼロのプログラム
一人でもチームでもプログラムに参加できます

mgn:なるほど。では、今回CASE Shinjukuさんで行われるStartup Weekend Tokyo Micro Edition(以下、M版)に参加すると、チームに分かれるんですか。それとも一人で勝手にやるものなんですか。

Lee:もう一回言いますよ。自由です。何故ならそれは関係ないからです。マーケットが何を欲しがっているか。それのみなのです。チームを組んでもいいし、全員でやってもいい。フォーマットは何もありません。ゼロです。

ずっと私がやってきた一番オーソドックスな週末の三日間で行うStartup Weekendというプログラムは、参加者のターゲッティングをしています。ターゲットは「起業できない人」です。だからそう簡単には起業できるはずがないんですね。ですからそこには少しのフォーマットを入れています。まずビジネスのアイテムを持った参加者がピッチをします。アイテムが多い場合は、投票でアイテムを選抜してチームをつくります。参加者がチームを組んでアイテムに取り組むというフォーマットです。

一方、M版では、Startup Weekendのフォーマットは使いません。Startup Weekendの次のステージだからです。ですから、一人で参加して、自分がやりたいことをそのままやってもいいです。ほかのチームにジョインしてもいいです。なんでもいいんです。共同創業者と参加してもいいです。社員としてジョインするのもありです。

mgn:分かりました。参加する人は、ビジネスを始めようとする人で、マーケットのことを調べて、何が望まれているか、もしくはその問題の定義から考えるところから始めようということですね。では、参加費3万円を払ってM版参加すると、どんないいことがあるんですか?

Lee:M版はあくまでも非営利イベントです。この3万円の意味合いは、M版の顧客開発とソリューション検証の目的で設定したものです。3万円はメンタリングフィーではありません。これ以上はここでは説明しづらいので、知りたかったら参加してみてください(笑)

今回は私がメンターとして、8年間7,000人から学んだノウハウをメンタリングするつもりです。私は失敗する理由はやり方を知らないからだと思っています。私は起業というものは、持って生まれた資質に左右されるものではないと思っています。科学的根拠のあるロジックがあって、プロセスがあって、使える技術、テクニックがあると思っています。それが伝われば誰でも起業できると思っています。

例えば、マーケットを調査する時も、Googleで検索するのは0点です。統計値を専門的に出している有料レポートサイトから検索すると少しは鮮度の高い価値のあるデータが出てきます。でも、それもまだNGです。データというものは基本的に死んでいるようなものだからです。今リアルに動いているリアルなデータの流れを読まなければならないんです。それは顧客からしか、マーケットからしか読み取ることはできません。まず自分のマーケットと接点をつくるところがスタートです。だからと言って、自分のターゲットマーケットに会いに行くために今から外に出るというのは、一番低次元のやり方です。

正しいやり方は、自分は動かずに「人と出会う」やり方です。正確には、ターゲッティングや反復などの面で、そのコストや効率を計算してみると、「会いに行きます・探し回る」より「会いに来てほしいです・見つけてくれるまで待つ」ほうが優れているという話しです。それを知っている人なら30分でできることを、知らない人は3ヶ月経ってもできなかったりします。そうするためにはいろいろな情報とテクニックが必要です。こういうことをメンタリングします。

 

Startup Weekend Tokyo Micro Editionの基本はメンタリング

Lee:今回の M版の特徴はメンターが三日間つきっきりでメンタリングを行うことです。Startup Weekendを長くやってきて気づいたことの1つが、メンターの知識が参加者たちに必ずしも正しく伝わっていないということでした。ではどうすればより正しく伝わるだろうか…現時点ではまだいいソリューションが見つかっていないので、とりあえずはメンタリングをもっと沢山やることにしました。そうすればより正しく伝わるかなと。すごく単純なソリューションですけど(笑)これから徐々に他のメンターさんたちも招く予定ですが、初期の段階では私が三日間つきっきりのメンター役を務めます。

mgn:ちょっと贅沢な感じがしますね。

Lee:贅沢と言うより、それしかできないんです。今は…。例えば、起業家に必要な知識を伝える方法の一つとして、世の中には沢山の書籍が出回っていますね。でもそのほとんどが何故か自分の役には立ってくれなかったりしませんか? 何故だか分かりますか? そこにはちゃんと論理的な理由があるんです。その理由を説明するカギは「Detail(ディテール)」です。

多くの書籍には、そのDetailまで書くことが難しい。限られた紙面などフォーマット上の様々な問題で正確に伝えることが難しいということです。ですが実際に起業しようとした時、その伝えられなかった部分が命取りになるんです。だから今、私ができるのはメンタリングなんです。すみません。これ以上はまた長い話しになりますので、ここでお話しすることは難しです。

でも、私はこれからはメンタリング以外で、この現実的課題を乗り越える方法を見つけることにチャレンジしていきたいんです。その一つのチャレンジが今回のM版なんです。

 

Startup Weekend Micro Editionはメンタリングのためのプログラム

mgn:十分魅力的だと感じました。最後に一つ、意地悪な質問をさせてください。メンターさんはビジネスがどうやったら成功するかを把握されているとすると、メンターをするよりもビジネスをすればたくさん儲かるはずじゃないですか? なのにメンターになるモチベーションは何ですか? 言い換えると、李さんがこのM版を開くモチベーションは何ですか?

Lee:なるほど。そこも先入観です。分かっていれば、それを駆使して実行できるという先入観です。メンターはメンタリングしかできないですよ。

mgn:え? そういうものですか?

Lee:野球のコーチと選手を考えてください。コーチは選手にホームランの打ち方を教えますが、コーチはホームランは打てないですよ。知識を使うためにはそれが筋肉にならなければなりません。筋肉に落とし込むためにプレイヤーが使う時間をコーチは別の用途に使っています。頭の中でロジックを再構築したり記録や見直しの為にその時間を使っているのです。コーチは身体は鍛えていませんからプレイヤーとして働けない。ではプレイヤーとして成功した人がメンターとして優秀か。それも別の話です。だから社長として成功した人に、どうしたら成功するのか聞いても教えられないんです。

mgn:なるほどはるほど。すごく分かりやすい。

Lee:駆使する技術と伝える技術は全然別の技術です。伝えるためには、例え話を使うテクニックや、相手が使っている単語の意味を正確にキャッチするテクニックが必要です。同じ意味なのに違う単語を使っている場合は、それを修正します。そういうテクニックが必要です。

例えば、私はこの会話の中で「アイテム」という言葉を使ってきました。気づいていましたか(笑)
ビジネスの話をする時、みんな「アイデア」という言葉をよく使いますね。ですが、私の意図を正確に伝える言葉としては、「発想」や「考え」という意味合いの「アイデア」という言葉よりは、「発想」や「考え」の他にも「発見された現象やターゲット」「発明や特許などのモノ」などの意味を含む「アイテム」という言葉が相応しいです。これはとても重要なことです。私はこんなことをメンタリングしていきます。

でも、私には起業はできません。9割9分できないと思います。今まで何回も失敗もしています。そもそも、私には起業家として一番重要なポイントが抜けているからです。

mgn:それは何なんですか?

Lee:起業家として一番重要なポイントは顧客を愛することです。自分が助けたい人がいて、何とかしたいと頑張った結果的、最後に成功するんです。私は、例えばめがねさんがガンで痛がっていても助けたいと思わないんです。私は人を好きになった時、その人が悪人であってもそのままが好きです。私が好きだからと言って、私がその人を変えたとしたら、それは本物から偽物に変わる。それが嫌なんです。私はありのままが好きなので直そうとしない。だから私は起業に向いていないんです。

mgn:でも今回の M版は、まさに参加する人を直すプログラムでは?

Lee:いえ、直すのではありませんよ。私が知っていることを伝えるだけです。

mgn:で、それによってどうなろうがそこは関係ないと。

Lee:関係ないですね。私がM版を始めるのは、今から起業するプレイヤーを助けたいからではないんですよ。このプログラムの本当の狙いは、スタートアップに成功した先輩プレイヤーたちを助け、究極的には日本のスタートアップ界を助けたいということです。後輩たちに伝えるべき知識とタイミング、そしてそれらを伝えるメンタリングのテクニックを科学的に開発し伝えることです。知っているのに教えられなかった多くの知見を持っている先輩たちが、後輩たちを正しく教えられるように。起業に関する知識とノウハウが伝わり蓄積されるように。

mgn:ほうほう。なるほど。参加したいです!
ありがとうございます。よく分かりました。個人的にはメチャメチャよかった!
参加できるように調整します!

 

◆開催に関するお知らせ

※Startup Weekend Tokyo Micro Edition #1は、定員に達したため募集は締め切られています。
※Startup Weekend Tokyo Micro Edition #2は、8月25日(金)-27日(日)で開催予定です。
申込みはこちらから

以降も月1回~2回程度、定期的に開催予定です。
詳しくは、StartupWeekend公式サイトまたはCASE Shinjuku WEBサイトなどでご確認ください。

 


この記事を書いた人

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森下 ことみ

有限会社そーほっと 代表取締役
株式会社まちづくり高田馬場 代表取締役
高田馬場経済新聞 編集長

☆CASE Shinjuku
☆新宿区立高田馬場創業支援センター
☆三鷹市SOHOパイロットオフィス
 などのシェアオフィスの運営をさせていただいています。
☆東京都 女性・若者・シニア創業サポート事業 地域コーディネーター

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