シェアオフィス&コワーキングスペース CASE Shinjuku のメンバーさんやパートナーさんのご紹介と合わせてこの機会にCASE Shinjukuについていろいろ聞いてみるという記事です。6回目の今回は、CASE Shinjukuの森下が、WEB開発やデザインまたWEB開発に関する技術書の執筆や講演などでご活躍されている株式会社Studio947の狩野祐東さんにお話をうかがいました。
狩野祐東(かのうすけはる)さんプロフィール
【氏名】狩野 祐東(かのう すけはる) さん
【社名・役職】株式会社Studio947 代表取締役/UIデザイナー/エンジニア/執筆家
【略歴】
アメリカ・サンフランシスコでUIデザイン理論を学ぶ。帰国後会社勤務を経てフリーランス。2016年に仕事上でもパートナーである妻さやかさんと株式会社Studio947を設立。Webサイトやアプリケーションのインターフェースデザイン、インタラクティブコンテンツの開発を数多く手がける。WEB制作に関する著書も多数。各種セミナーや研修講師としても活動中。
【主な著書】
『HTML5&CSS3デザインレシピ集』(技術評論社)
『いちばんよくわかるHTML5&CSS3デザインきちんと入門』(SBクリエイティブ)
『確かな力が身につくJavaScript「超」入門』(SBクリエイティブ)
『スラスラわかるHTML&CSSのきほん』(SBクリエイティブ) ほか
Interview
狩野さんがCASEを使うきっかけは?
4年前、CASE Shinjukuさんがオープンする前から「高田馬場にもコワーキングスペースができるらしいよ」という情報をキャッチしていました。当時、僕はフリーランスでWEBの開発やデザイン、それに関する執筆などの仕事をしていて、自宅の近くにこういう場所ができればいいと思っていたので、ずっと気になっていました。実際に見学にも来ましたが、当時の僕には、CASE Shinjukuの月額利用料を払うだけの余裕(心の余裕)がなかった。
そんな時、仕事上のパートナーでもある妻が、たまたま新宿区の区報で、新宿区立高田馬場創業支援センター(以下、創業支援センター)で利用者を募集しているという記事を見つけたんです。創業支援センターは、CASE Shinjukuのシェアデスクとほぼ同じスペックで月額利用料が1万円なんです。そんな経緯で創業支援センターでお世話になることにしました。ただ創業支援センターは利用期間が2年と決められているので、2年後はCASE Shinjukuさんを使うということは、そのときからなんとなく決めていました。
一人で仕事をするなら、絶対コワーキングスペースやシェアオフィスがいい。
同業者もそうですが、意外と異業種の人の話が仕事の役に立つんですよね。CASE Shinjukuには、いろいろな業種の方がいて、仕事の合間の雑談やランチ会・飲み会などの交流会で小耳にすることがいい刺激になる。聞き耳を立てているわけじゃないけど、周囲の
直接仕事のやりとりがあるということは少ないですが、そういういい刺激がもらえる場にいることは大事だと思っているんです。
実は僕は26歳から、サラリーマン→フリーランス→サラリーマン→フリーランスという職歴を持っています。僕はどちらかと言えば社交的なタイプでもないし、フリーランスになって自宅に籠もって仕事をしているうちに社会から隔絶された感じになって、思うように受注もできませんでした。それでフリーランスは向いてないなと思って再就職したんです。ところが就職した会社が倒産してしまって。一度フリーランスで失敗しているので、会社を辞めることは考えてなかったのに、そうせざるを得なくなって、またフリーランスになったんです。会社が潰れなかったら今でもサラリーマンをやっていたと思います。
最初のフリーランス時代の失敗の原因は、家に引き籠もって社会と隔絶された環境で仕事を続けたことだと思っていたので、2度目にフリーランスになったときには、社会とちゃんと関わりを持たないと駄目だということを強く思っていました。交流を絶やさないようにということを肝に銘じていたんです。
だから創業支援センターにいたときも今も、可能な限りセミナーや交流会には参加するように心がけています。「どんなに忙しくても、できる限り参加するんだ!」という気持ちを持っていないと、結局、シェアオフィスの中で引き籠もってしまうことになる。それでは最初のフリーランス時代の教訓を生かせません。
株式会社Studio947について
2002年にビジネスパートナーである妻とSOLIDPANDA-DESIGN(ソリッドパンダ-デザイン)という屋号で仕事を始めました。その後、紆余曲折があり、2016年3月1日、CASE Shinjukuに来るタイミングで、株式会社Studio947という法人を設立しました。法人にする動機付けとなるようなことは特になかったんですが、どうせやるなら会社にしようと。
書いた本が営業をしてくれるようになって…
主な仕事は、WEBサイトやアプリケーションのインターフェースデザイン、インタラクティブコンテンツの開発です。僕のほうは現在、技術書の執筆やそれに関連したセミナー講師の仕事に注力しています。
執筆の仕事をするきっかけは、最初のフリーランス時代に、個人サイトで公開していた妻のイラストが編集者の目にとまって依頼が来たことです。妻には技術のことは分からないので、僕が執筆を行うことに。最初から独立して本を書こうと思っていたわけではないんです。2度目にフリーランスになったときには、積極的に本の企画提案の売り込みに歩いて仕事を取る努力をしました。コツコツやっていく過程で、2013年に出版された『
本が売れると、その本が営業をしてくれて、新規の執筆依頼やセミナー講師の依頼が舞い込んでくるようになりました。当面、僕は執筆と講師業を中心に活動するつもりです。
はじめての雇用で「一人でないことの効果」を実感
そんなことで、あまりにも忙しくなったので人を雇うことにしました。それに、一人でやっていたら次第に硬直化してしまって新しいものが出なくなってしまうという危機感がありました。
急募というわけでもなかったので自社のWEBサイトで求人をしてみました。それが何か月も何の反応もなくて…。忘れた頃に、僕の本を見て勉強をしているという男性から問い合わせがあって、何度か会って話をしてみて彼と一緒に仕事をすることにしました。
人手が増えても、自分の手が空くわけではないことはすぐに分かりましたが(笑)。
実務だけでなく管理が増えて、余計にしんどいけど結果的にそれが、自分自身と会社が変わるいいきっかけになると信じています。新しく人が入ってくることで、今までのかたちを変えなければならない。そのことによって、視野が広がって今まで気がつかなかったことに気づく。仕事量は増えたけど、今までできなかったことができるようになるという実感があります。「一人でないことの効果」に気づけて本当によかったと思っています。
逆に言えば、自分の労力を軽減するために人を雇ってもいい効果は得られないと思います。それがきっかけになって新しいことができるようになる、ほかのことができるようにすることが大事ですね。
「考えるくらいならやれ!」と自分に言い聞かせる
技術書を書くという仕事は、自分のアイデア(ネタ)を基にしているし、執筆自体も分業することが難しいので、ずっとこの先どうなるのかという不安がありました。ほかにやりたいこともあったけど、それに費やせる時間がなかった。人を雇ったことでやっと新しいことにチャレンジできるようになりました。今は次の事業の種まきの時期だと考えています。
例えば、2020年に小学生の学習指導要領でプログラミングが必須科目になります。子ども向けプログラミングを教えるとか紹介するということを事業化したいと考えています。今はそのための投資の時期と考えています。忙しいけれど、無駄や遠回りを覚悟で試行錯誤してみようというモードです。
そんな状況になってきたので、そろそろ当社の事業計画書を書こうと思っているところです。
僕はどちらかと言うと、一人が好きで、人と遊びに行くのも好きじゃない。でもフリーランスで仕事をやるうえで、やっぱり人とのつながりが大事だということに気づいた。それで自覚を持って人と接点を持つように心がけるようにした。それに、もともとはどちらかと言えば慎重なタイプ。だけど実際にやってみると、多くのことはビビっていたほどじゃない。このことを経験的に学びました。だから会社をつくったときも、人を雇うときも、勇気が必要なときは「考えるくらいならやれ!」と自分に言い聞かせてチャレンジしてきました。
自分も会社も日々、新しい風が吹く中で変化や成長があることが大事だと思っています。
最後に、CASEについてひとこと…
集中してずっと椅子に座って仕事ができるタイプではないので、広いのがとてもいいですね。
希望としては、もう少し利用者同士の交流があったらいいと思うんですよね。人に頼むことじゃないんですけど、少しじっくりと話ができる機会、踏み込んだ話ができる機会が増えるといいと思います。顔見知りにはなるけれど、なかなか深まっていかないのがもったいないなと。
狩野さん、ありがとうございました。「踏み込んだ話ができる機会」大事ですね。心がけてまいります!
2017.9.29 CASE Shinjukuにて