宅 清光 さん プロフィール
1943年、奈良県葛城市生まれ。大阪大学大学院基礎工学(機械)修士課程終了。在学時代はボート部に所属。1968年、三機工業に入社 空調冷熱部設計課に配属。日本初の全館空冷ヒートポンプ方式の事務所ビル空調、日本初のコージェネで全館空調する研究所の設計施工、自動車全天候型試験装置、半導体クリーンルーム、データセンター等多くの建物の空調設備の設計に従事。この間技術士、公害防止管理者、建築設備士、一級管工事施工管理技士等の資格を取得。その後、営業部へ転籍。技術研究所で技術開発に取り組む。常務取締役、専務取締役を経て、2001年社長就任、2007年相談役、2013年、名誉顧問を歴任。
2014年、三機工業を退社。「環境・エネルギーコンサルタント」として活動を始める。 具体例として「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」のテクニカルアドバイザーを務める。
1.現在の事業内容について教えてください
省エネルギー・再生可能エネルギーの技術支援と中小企業経営者の経営アドバイザー
大きく分けて二つあります。
一つは、今、全世界が「2050年カーボンニュートラルの実現」という目的に向かって動いています。私は空調のエンジニアとして活動をしていましたので、この目的を達成するために、主に中小企業や全国の市町村への、省エネルギー、再生可能エネルギー導入の技術支援をしています。
もう一つは、現役時代に携わっていた建設業界の中小の企業の経営者を対象に経営コンサルの仕事をしています。
一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク
省エネ、再エネに関しては、中小企業の経営者の集まりである「一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク」(エネ経会議)のテクニカルアドバイザーとして活動が中心です。
この団体は、もともと小田原の鈴廣かまぼこの副社長(鈴木悌介氏)が日本商工会議所青年部の会長をされていたときに、当時所属していた経営者350人が、青年部を卒業したあとも、みんなで定期的に集まろうということで任意団体として発足したものです。
2011年3月11日に起こった東日本大震災のときには、甚大な被災に合った仲間たちのところにこのメンバーが駆けつけて助け合ったんです。このことをきっかけに、任意団体から一般社団法人となりました。
ただ、この団体は経営者の集まりで、エンジニアの集団ではないんですね。そこで、省エネルギー、再生可能エネルギーについて技術的な支援をする組織がほしいということなりました。ちょうどこのタイミングが、私と私の仲間たちが三機工業を退社して独立した時期と重なっていて、テクニカルアドバイザーとして2014年に「エネルギーなんでも相談所」という組織を立ち上げました。
具体的な活動としては、例えば、食品メーカー、病院、スーパー、冷凍冷蔵倉庫などエネルギー多消費型の会員事業者のもとに出向いてエネルギーに関する技術支援を行っています。
― その費用は会員事業者が負担するわけですね?
いえ、私と立ち上げた数人でのボランティア活動が2年ほど続きました。
2016年に、中小企業を対象に「省エネルギー相談 地域プラットフォーム構築事業」という補助事業が生まれました。これは、中小企業から要望があれば、出向いて調査をし、省エネルギーの試算をし計画策定をする、その出張交通費・調査費用・計画策定に関して補助が出るというものです。この事業は継続していて5年が経過しています。
― 国の制度が後から追いついてきたという感じですね
そうですね。これによって日本技術士会の友人や三機工業で一緒に仕事をしていた後輩など、資格も能力もある人材に参加を要請することができるようになりました。今では、エネルギー何でも相談所は、再生エネルギーチームで10人、省エネルギーのチームで25人ほどで活動をしています。
― 代表的な事例をお聞かせいただけますか
例えば、2015年に竣工した鈴廣かまぼこの本社ビルのZEBの例があります。ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)は、「快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目的としたビル」のことです。同様のコンセプトの個人住宅はZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)と言います。
― 重要なキーワードですね。しっかりと覚えておきます
もう一つ、面白い事例があります。群馬県みなかみ町に、「キャニオンズみなかみ」という施設があります。ここはもともと、ある機械製造メーカーの保養施設でした。これを、ニュージーランド出身のマイク・ハリスさんが買い取って立ち上げたものです。「お客様、コミュニティー、自然、そしてクルーを世界レベルのサスティナブルなアドベンチャー体験を通してリフレッシュする」という理念の下に運営され、夏はラフティングやキャニオニング、冬はスキー・スノーボード・スノーキャニオニングを楽しむために、国内外から若い人たちが集まる施設です。
もともとこの施設のボイラーはA重油を燃料としていました。これは環境にもコスト的にもよくないということで、みなかみ町で産出される木を燃やして使う装置を導入しました。この燃料転換によって脱炭素が実現できました。
― ZEBやZEHが、どんどん普及していくことが大事なんですね
2.創業しようと決めたきっかけは何ですか?
エネルギーコンサルタント 宅清光としてスタート
三機工業の社長退任直後は、相談役という立場になりました。自分のあとの経営陣に影響を与えることはよくないと考えて、相談されない相談役に徹していました(笑)
長く会社に籍を置くこともできましたが、私は70歳になったら、三機工業を辞めようと心に決めていました。その後、何をするかということについては、おぼろげではありますが、またエンジニアに戻ってやりたいと思っていましたので、勉強会や外部の活動に参加したりして準備をしました。退職の1~2年の間、そういう活動をして、ちょうど70歳で退社しました。
3.CASE Shinjukuを事業拠点にしようと思ったのはなぜですか?
自宅は窮屈、縁あってシェアオフィスへ…
退社当初は自宅で活動していたのですが、それでは窮屈なので、どこかいい場所はないかと探し、新宿区立高田馬場創業支援センターを見つけて申し込みました。ここでシェアオフィスというのは、自分の家とは違って、仕事と家庭が分離できている、社会的な活動をするには、大変よい環境であると実感しました。創業支援センターは利用期間が2年間と決まっていましたので、その後、CASE Shinjukuさんに、お世話になることになり今日に至っています。
― CASE Shinjuku にとっても、宅さんは、とても心強い存在です
4. 今後の事業展開、ビジョンについて
― 今後については、どのようなイメージを持っていらっしゃいますか?
当面、今のまま二つの事業を続けていくと思います。お陰様で、双方から要請もありますし。
― 宅さんの技術者・経営者双方の経験が求められているということですね
経営コンサルは、主に二代目、三代目の若手経営者が対象になっています。彼らは、考え、悩み、経営決断をするわけですが、そういう若い経営者と対話をすることは、私にとっても非常に刺激的です。
また、同じ業界とはいえ、三機工業はそれなりの規模ですから、経営のトップとしての意思決定システムは中小企業のトップとは異なると思います。今、経営相談を受けている若い社長が、ある決定を下すことが、その会社の業績に直結する。そういう意味で、三機工業時代とは違った臨場感というか緊張感が生まれるのも事実です。
― 双方にとって実りあるお仕事ですね
建設業は、デジタル化・IT化が一番遅れています。今いかにIT化、デジタル化していくかということが急務になっています。この分野に関してもソフトやシステムを紹介してアドバイスをします。その結果が、また自分の勉強にもなっています。
― エネルギーの分野ではどうでしょうか
エネルギーの部分について言えば、僕が体験、経験をした技術をテクニカルソリューションと呼ぶならば、かなり役に立っていると思います。ただ今は、それを担保するためのエネルギーのマネジメントシステムの導入が求められています。これを、EMS(Energy Management System)と言います。ビルの場合は、BMS(Building Management System)、住宅はHMS(Home Management System)と言います。このエネルギーのマネジメントシステムによる、エネルギー使用状況の「見える化」や管理、分析、制御が求められている。この分野については、三機工業時代の後輩で、EMSを得意分野としていた人を退職後に誘ってその技術や経験を提供してもらっています。彼自身も張り切ってやってくれています。
全くボランティアで報酬が払えなければ、私も頼みづらいですが、経済産業省から補助が出ますので依頼しやすくなっています。
空調には、空気の流れと空気の成分、それをより良い環境に維持するためのエネルギーという三つの要素があります。空調は経験工学なんです。ですから、大学を卒業したばかりで基礎を身につけた人だけでは、現場での問題解決ができないんですよ。そういう意味で、私は空調ソリューションを提供することについては、まだまだお役に立てていますね。
― 日本の未来、世界の未来のために、これからもご尽力をお願いします
5. 趣味・特技・自慢話
― 趣味や特技、ちょっとした自慢話などが、人と人がつながるコネクターになったり、趣味や特技が誰かの役に立ったり、仕事につながったりということがどうもあるような…という主旨で趣味、特技、自慢話をお伺いすることにしています
趣味は日課のウォーキングと仲間とのゴルフ
健康を意識しています。毎朝6時、夏には5時に起きて3キロ歩いて、その後、ストレッチをする。もう何十年もこれを習慣にしています。
あとは、健康管理も兼ねてゴルフをしています。平均月2回、8月と2月はお休みしますので、年間で20回くらいコースに行きます。ゴルフの仲間は気の置けない仲間たちとの交流でもあります。
6. メンバーの皆さんへの呼び掛け
私のような年齢の人間で、お役に立つことがあれば何なりとお声掛けを
CASE Shinjuku を利用される方は、私よりも若いので、何かお役に立つことがあれば、何なりとお声掛けください。起業して頑張っていらっしゃる方とお話しすることが大好きです。
― 宅さん、ありがとうございます。いろいろ相談させていただきます。これからもよろしくお願いいたします。