シェアオフィス&コワーキングスペース CASE Shinjuku のメンバーさんやパートナーさんのご紹介と合わせてこの機会にCASE Shinjukuについていろいろ聞いてみるという記事です。3回目の今回は、CASE Shinjukuの森下が、CASE Shinjuku オープン当初からのメンバーである、漫画原作者 猪原賽こと猪原大介さんにお話をうかがいました。
猪原大介さん プロフィール
【氏名】猪原大介(ペンネーム:猪原賽)
【略歴】
漫画原作者。代表作は『学園ノイズ』(オオシマヒロユキと共著)『悪徒-ACT-』(漫画・横島一)など。
埼玉県出身。2000年、オオシマヒロユキとのコンビマンガ家・猪原大介としてデビュー。2008年にコンビ解消、漫画原作者・猪原賽として再デビュー。週刊少年チャンピオンを始め、多くの出版社、雑誌で連載。最近作は現在月刊ヒーローズ連載『放課後カタストロフィ-Re:THE END of the end-』(漫画・平尾リョウ)。
漫画原作執筆の傍ら、地域情報・グルメブログ「NewsACT」を個人で運営している。
公式サイト:http://iharadaisuke.com/
作家ブログ:http://iharadaisuke.hatenablog.com/
NewsACT:http://news-act.com
【主な著書】
『学園ノイズ』(オオシマヒロユキと共著)
『悪徒-ACT-』(漫画・横島一)
『放課後カタストロフィ-Re:THE END of the end-』(漫画・平尾リョウ)
『ガンロック』(漫画・横島一)
『漫画原作者は一体「何」を書いているのか』Kindle版
『漫画原作のゲンバ』(漫画・横島一)Kindle版
Interview
猪原さんが、CASEを使うようになったきっかけは?
漫画業界で大先輩で『解体屋ゲン』(週刊漫画TIMES)の漫画原作などで有名な星野茂樹さんが、CASE Shinjukuのプレオープンの時にここを見に来ていて、「行ってみたらー」と勧めてくれたのがきっかけです。でも、その時は「ふーん、でも俺、今、仕事ねえしなぁ」って感じでしばらく来ることはなかったんですけどね。数ヶ月後、お陰様で幾つか仕事が決まって急に忙しくなってきて、家では集中力が続かないから、いい仕事場になるところがないかなーと思った時に、ここのことを思い出したんです。また来てみると、やっぱりきれいだし、広いし、そして“誰もいないし!”、喫茶店やファミレスよりはずっとゆったりできるし、いいかなと思ってメンバーになりました。
その頃は、ユーザーさんが本当に少なくて貸切状態の日もあって「すっげー、快適だなー」と(笑)
あれれ? 猪原先生! 何してるんですかー!?
猪原:(ビール片手に)あ、これ? ただの小道具ですよ! 飲みませんよ。
岸 :飲まないとしゃべれないんですかー(笑)
猪原:いや、飲みませんけどね。
めがね:円滑にしゃべるためには仕方ないですよねぇ…
森下:ビール日よりだしねぇ。飲みましょうよ!
猪原:仕方ないなー。仕事中にノンアルコールビールを飲むのは是か非かという記事が最近WEB上を賑わせましたが…まあ、飲みたいよね。
プシュ!!
注)取材上の演出ということで特別に飲酒しています(^^;)
漫画原作者 猪原賽の仕事とは?
漫画原作者って、あんまりいないんですよ。有名どころとしては、『巨人の星』『あしたのジョー』の梶原一騎先生、『北斗の拳』の武論尊先生と言えば分かりやすいかな。ちょっと古いけど。
僕はもともと漫画家としてデビューしたんですよ。キャラ絵が上手い相方がいて、主にその相方がキャラクターを描いて、僕が背景とか仕上げを描くという役割分担で作品を作ってたんですけど、その相方が突然、フランスに移住してしまってね。じゃあ、もう一緒にできないねと。でも自分で絵を描くのはもうやだなーと思って。そんな時、ある編集者さんから「この人と会ってみませんか」と声を掛けてもらって「原作を書いてみませんか?」と言われたのがきっかけでね。それで原作者に転向したんです。その人とは、原作というかたちではないですけど、今でも『仮面ライダークウガ』(月刊ヒーローズ)という作品でスタッフとして関わらせてもらっています。
というわけで、最初から「漫画原作者になりたーい!」と思ってなったわけではないので、ちょっと特殊な立ち位置ではありますね。で、原作者としてやっていこうと決めた時に、いろんな出版社に企画を持ち込んだんですよ。でもなかなか上手くいかなくて。ただ、そのことを覚えてくれていた編集者さんが声を掛けてくれたり、コンビを組んでいた時にお世話になっていた編集者さんが声を掛けてくれたりしてくれてね。お陰様で漫画原作者として食べていけるようになりました。
漫画の原作って、テキストで絵の指示をするわけですよね。例えば、こんなとんでもない絵をどうやって指示するんですか?
(出典:『ガンロック 』1 秋田書店 漫画:横島一)
『ガンロック』の作画は大部分が横島一さんの創作です。絵コンテを描くこともありますが、横島さんにはテキストだけのシナリオを渡しています。横島さんの作画は意外で「あ、こうきたか!面白いな」と思うことが多いですね。想像を超えたところでこういう絵が上がってくるんですよ。こんなふうに「僕が提供した素材をどう料理してくれるのかしら」とワクワクできるのは、一人じゃない、競作の醍醐味ですね。例えば野菜の生産者の気持ちに近いかなぁ。「こんなにいい素材を作ったよ、さあどう料理してくれるのかな」という感じですね。シナリオである程度の情報を与えて、あとは漫画家さんのセンスで絵が上がってくるというわけです。シナリオを受け取った漫画家さんがどう描くかはある程度自由です。
原作者としては、ていねいに台詞とト書きを書き込んだシナリオを書くわけです。気をつけていることはコマ割り。ここは見開きとか、ここでページ送りとかね。「ここでページをめくると、絵がバーンときてビックリしてもらえるだろう」みたいなシナリオを書いているんですよ!
そのへんは、もっと知りたかったら、僕が個人的に出しているKindle版の『
小説は、文字だけで全てを表現しなきゃいけないんですけど、漫画は絵があるので、ある程度、端折っていいんですよ。状況を説明するト書きを書いて「ビジュアルや構図はお任せします」という端折った書き方をするんです。小説とは書き方は全然違う。漫画はできるだけ台詞は少ないほうがいいと僕は思っているので、削って削って削って、台詞が一つもなければそれが最高だと。だけど、小説はそれが許されなくて、状況を説明するためにどんどん台詞が長くなっていくものなんです。小説を書こうとしたこともありましたが、もともとが漫画家なので、どうしても台詞は削ろう削ろうとしてしまって上手くいかなかった。状況説明を書いてると「こんなん、漫画でババーンと見開きになってたほうが面白いじゃん!」とか思ってしまうと…もうね…(笑)
100万部を突破するような漫画が創れそうですか!
この時代、なかなか難しいでしょう。狙ってできることじゃないし。勿論、みんなそのつもりで書いていると思いますけどね。出版業界全体が厳しいですからね。かと言って例えば企業広告漫画のようなものに手を出すつもりもないし。企業広告漫画はクライアントが求めているものをそのまま描くものだから、つまりはクライアントが原作者なわけですよ。絵を描く人がいればいいわけで、そこに僕が入る意味はない。
絵ならちょっとした日常ネタや四コマ漫画がTwitterでバズることもあるけど僕がやりたいと思っているのはそっちじゃない。長く続く物語を紡ぎたい。時代に合ってないから打ち切りばかりで続かないんですけど(笑)
……もうそろそろ漫画の話から離れませんか?
では!ブログ『NewsACT』の話をば。
もともと『NewsACT』は、仕事がなくてプラプラしていた時に、「ねたたま」のKSNさんから、新しいブログを立ち上げるから記事を書いてみないかと誘われて始めたものなんです。1年くらい経ったところで、このブログは任せると言われて…。2012年9月にスタートしたブログで、主に中野・杉並・高田馬場周辺のグルメネタやコンビニ飯などの紹介比較記事が中心で、いま月間30万くらいのPVがあります。
僕はやっぱり自分は漫画原作者、創作者だと思っているので、片手間だと思われると嫌なんですけど、ブログは創作のための取材のきっかけになる活動だと思っています。ブログに書きたいから、あの人に会いに行こうとか、あそこに行ってみようとか、あれを食べてみようとか、いろんな体験をするためのきっかけであって、それをアウトプットしてそれがある程度のPVと収益になれば二度美味しいね、よかったね、というものです。
CASE Shinjukuに来たのも、「ブログのネタになるかなー」というところもありましたね。そのお陰で人脈が広がって、高田馬場新聞さんと同じお店に取材に行ってコラボ企画的な記事を書くことができたりね。そういうコミュニケーションのためのツールでもあります。そもそも作家なんて、家に籠もっていても文字は書けるわけですよ。だけどそれじゃ枯渇する。ブログは僕にとって強制的に自分の尻を叩いて外に出ていろんなものを楽しんだり体験したり人に会ったりするための理由付けなんです。そのために毎日欠かさず1記事UPすることを自分に課している。創作のモチーフがどんどんストックされていくところが大事だったりするわけです。僕のインプットのためのツールの一つであり、即、創作に生かせなくてもアウトプットの場にもなるしね。
まあ、ほとんど酒場での酔っ払いの話をストックしているようなネタですけどね(笑)
ただ、行って飲むだけだと流れて終わりだけど、ブログに書くとテキストで残るし考えたことによって自分の記憶にも埋め込まれるし。人に見せる日記を毎日を書いているということに近いのかな。
CASE Shinjukuで仕事をしていたお陰で、『NewsACT』はアプリにもなりましたしね! ブログをアプリにしようなんて考えたこともなかったですけどね。同じCASEメンバーの株式会社ALPHAの戎井一憲さんが提案してくれて。コアなファンの方に使っていただいているようです。
猪原先生とCASEについて
猪原先生には、たびたびブログでCASEを取り上げていただいていまして、ブログを読んでやって来てメンバーになってくださった方が何人もいらっしゃるのです。
まあ、僕自身が過ごしやすくて仕事がしやすい環境だったし、漫画家とか、ライターさんとか、そういう人はこういうところで仕事したほうがいいんじゃないかなってブログに書いたら、それを読んで来てくれる文系の人もいて、ほかのコワーキングスペースよりもここはそういう方が多いですね。でもそれは、この空間作り雰囲気によるところも多いと思いますよ。理系の人が多いコワーキングスペースとは少し違う雰囲気ですよね。カフェのような雰囲気で、それでいて長居しても嫌な顔されない、電源がある、Wi-Fiはセキュリティも速度も問題ない。
猪原先生のもう一つのブログ『漫画原作者 猪原賽BLOG」から、ちょっと引用させていただきました…
“コワーキングスペースを利用する職種は様々ながら、基本的にフリーランスの方が多い。そしてプログラマーやデザイナーが多いです。
そんな中で、私のような作家が仕事をしているのは極めて稀ですが、いろんな方と出会う機会は、家にこもって仕事をしていたら、絶対ないこと。この“刺激”が、なかなかに創作意欲を高めるんですよね。マンガ業界だけに居たら、見えないことが見えたりもする。” -上記ブログより引用-
コワーキングスペースを使う人は、そのつながりを仕事につなげたりしますけど、僕のような仕事だと、それほど具体的に仕事としてはつながってはいかないけど、そのゆるっとしたつながりのお陰で、協力してもらえることがあったり、教えてもらえることがあったり。僕の仕事を知ってくれていて、情報を持ち込んでくれる人もいて、ありがたいなと思うことがあります。全然、業種が違うので、僕とは違う観点、違う方向を見ている人たちがいて、僕の知らない世界に触れることができる。僕が知らない世界に興味を持ってそれを仕事にしている人たちがいることが刺激的でもありますよね。
そしてCASEを舞台に繰り広げられるB級グルメをはじめとする数々の比較記事!
例えば、カップラーメンの食べ比べ。食べ比べしたいけど、量的に一人じゃ無理だから、ほかのメンバーさんに声を掛けて、一緒に食べてもらって批評してもらったという記事。最近では、気になるお土産とか箱買いしたものとか、記事を書いて皆さんで食べてもらったりね(笑)
例えば、バルミューダの「BALMUDA The Toaster」(定価 税別で22,900円)と実売価格2,500円の普通のトースターの比較。CASEにバルミューダのトースターが導入されたのが、たまたま僕が引っ越しに合わせてトースターが欲しいと思っていたタイミングだったので、二つ並べて焼き比べたという記事。そりゃ、気になりますよね。どんだけ違うのかって!
やっぱりたくさん人がいてくれるからということがあるし、喜んで付き合ってくれる人がいるからできることですよね(笑)
みんな猪原さんのおかげで随分盛り上がっているはず!「大人の子供じみた遊び」が、みんな大好き!
あー、カレーを作ったりファミコン大会をやったりもしましたね。確かに初期の頃は、ここ(CASE)を広場に「どう遊べるかなー」という雰囲気があったね。そういう意味では最近、パワーが衰えているんじゃないですか!?
では最後に、これからのCASEについて…
やっぱり短くなった営業時間問題ですよね。オープン以来21時までだった営業時間が18時になりましたよね。18時で終わりって早いですもん。いろいろ考え方はあると思うし、CASE Shinjukuには24時間使えるシェアオフィスがあるから、コワーキングスペースが18時で営業を終了しても、そっちを使えばいい。とは言え、この広いコワーキングスペースを18時の営業終了後にどう有効活用するかですよね。
僕はオープン当時からここにいていろいろ見ていますが、最初の数年は、午後6時くらいを過ぎてくると、何気に缶ビールが持ち込まれて、時間のある人はちょっと飲んで行きませんかみたいな感じでメンバー同士のコミュニケーションの場がありましたよね。先ほど話したファミコン大会やカレーの日のようなイベントもあって「みんなの仕事場兼遊び場」という感じがあった。そういうのがなくなっているなぁ感がありますよね。何かね、もったいないよね。ランチ会もいいけど、ちょっと気持ちが弛緩したところでメンバー同士が軽く話ができる場があったほうがいいのかなーと思います。
そろそろ「大人が全力で遊ぶ楽しいイベント」ですね! 猪原さん、貴重なご意見ありがとうございます!!